Research Abstract |
ヒト切断3膝を実験対象とし,膝関節力学機能検査ロボットシステムを用いて測定を行った。屈曲角度0°,30°,60°および90°において膝の生理的に自然な運動を許容しながら,膝関節に最大100Nの前後方力をあたえた。前十文靱帯の前内側方の前方(AQ),前内側方の後方(PQ),後外側部(PL),内側側副靱帯(MCL),後十字靱帯の前部(AL),後十字靱帯の後部(PM),外側側副靱帯(LCL),関節包(Capsule)を順次切断するごとに,健常膝の3次元運動を再現して膝にあたえた。重ね合わせの原理を用いることにより,それぞれの靱帯に生じた張力を求めた。 膝関節に前方力をあたえたとき,ACLに生じる張力は屈曲角度と共に減少し,100Nの前方力のとき,88N(0°屈曲位),54N(90°屈曲位)であった。逆にMCLに生じる張力は屈曲角度と共に増加した。ACL内では軽位屈曲角度においてPLに生じる張力が最も大きく,屈曲角度が増加するにつれてPQに生じる張力が大きくなった。膝関節に後方力をあたえたとき,PCLに生じる張力は屈曲角度と共に増加し,100Nの後方力のとき,30N(0°屈曲位),105N(90°屈曲位)であった。PCL内では屈曲角度が増加するにつれてALに生じる張力が大きくなった。靱帯内に生じる張力の大きさが屈曲角度に依存することは,臨床的事実に一致した。また,ACL内およびPCL内の張力の分布に関する結果は,Girgisらの解剖学的研究によって得られた結果を定量的に説明するものであった。靱帯損傷診断の方法開発,靱帯再建術の術方針の検討と開発に有用な結果であると考えられた。
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