Research Abstract |
脳内微小血管の神経支配のうち,交感神経支配について研究した. [背景]脳実質血管への交感神経支配は蛍光抗体法や免疫組織化学法と徐神経との組み合わせにより研究されているが,脳実質内での走行と分布は明らかにされていない. [目的]脳血管への交感神経節後線維の起始であるとされる上頸神経節WGA-HRPを注入し,順行性標識によって脳実質内血管への交感神経の走行と分布を直接的に解明する. [方法]体重2〜3kgの成猫の一側上頸神経節に2.5〜5%WGA-HRP5μ1を注入し,生存期間48時間の後,潅流固定して大脳から頸髄までを摘出した.ミクロトームにて厚さ50μmの前額断凍結連続切片を作成し,MesulamのTMB法で組織化学的処理を行い,偏光フィルターを装着した光学顕微鏡にて脳実質内標識線維を観察した. [結果]標識線維束を伴う脳実質内血管は大脳前部(直回)から延髄下部まで認められ,ほぼ注入側に限局していた.分布密度は灰白質,特に中隔野,視床下部,大脳基底核,扁桃体,および脳溝に面する大脳皮質で高く,白質ではごく低かった.大脳皮質では標識線維は軟膜血管に伴行して皮質内に進入し,深部に向かうが,白質内まで達することはなかった.この皮質内血管の直径は20-30μmであった.その他の部位では主として脳表主幹動脈の分枝である穿通枝に伴って進入するが標識線維は直径40μm以上の血管に多く認められ,それより細い血管に観察されたものはごく少数であった. [今後の計画]さらに同様の方法で脳内微小血管の副交感神経支配や感覚神経支配を直接的に解明する.
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