Research Abstract |
我々は、子宮筋腫の生物学的特徴を明らかにすることを目的として以下の検討を行った。 まず手術時に筋腫、子宮筋組織を採取し組織を細切しシャーレに置き、DMEM +10% FCSを加え培養した。培養筋腫、子宮筋細胞の形態的差異を明らかにするために細胞の動的変化を映画撮影し検討したところ、子宮筋細胞は平行に配列増殖し、培養3週間目に直線的な細胞収縮によりhills and valleysを形成した。一方、筋腫細胞はあたかも癌細胞の様に方向性を持たずcontact inhibitionがかからない細胞間配列の乱れを認めた。培養3週間目になると細胞は球状に集合し周囲の細胞をむしり取るように収縮し球形でmyoma ballと命名した形態を形成した。この形態的相違はin vivoにおける子宮筋と球状な筋腫腫癌に類似しており、この培養系は筋腫の生物学的特徴について研究するのに有用な系であると考えられた。次にこの培養細胞が平滑筋細胞よりなることを確認するために、透過電子顕微鏡を用いて検討したところ、両者ともに平滑筋に特徴的な、dense bodyを持ったmyfilamentが細胞膜周囲に走行し、細胞膜に沿ってsurface vesicleを認めた。さらに筋腫細胞においてmyoma ballが形成される機序を明らかにすることを目的として、子宮筋と筋腫細胞の形態的差異は細胞骨格因子(α-Smooth Muscle Actin,Myosin,Desmin,Vimentin,β-tublin)、細胞外matrix(cellular-Fibronectin,Laminin)、細胞接着因子(E,N,P,Cadherin,β-I-Integrin)の差異によるのではないかと考え種々の抗体を用い間接的免疫蛍光染色法により比較検討したところ、myoma ballは、細胞骨格因子としてactin filamentの走行が乱れ、細胞外matrixのfibronectinが増加し、さらに細胞接着因子であるN-cadherinの発現により細胞間の接着力の増加により形成してくるものと推察された。この実験系は子宮筋腫の生物学的特徴、さらには筋腫の薬物療法の効果等について検討するのに有益な実験系であることが期待された。
|