Research Abstract |
分子生物学的パラメータと癌の生物学的悪性度との関連を検討するため、PCNAとP53の検索を行い、喉頭癌の細胞増殖、浸潤との関連を比較検討した。癌抑制遺伝子であるヒトP53は第17染色体短腕上に位置する蛋白で、DNA結合能を有し細胞増殖制御に関与しており、また、PCNAは増殖細胞核抗原でありいずれも癌の発生増殖に密接に関与しているものと思われる。対象は、1986年以降東京医大耳鼻咽喉科にて喉頭癌と診断した症例のうち、初回未治療時生検材料にて検討し得るものを対象とした。結果)1,PCNA:(1)T分類による陽性率はT1a以上で陽性率は高かった。(2)癌の浸潤度の強弱での差はなかった。(3)組織学的には高分化型で陽性率が高かった。2,P53:(1)Tisでは陰性を示した。Tlaでは一部陽性を示すものがあり、T2以上ではほとんどの症例で陽性を示した。(2)癌の浸潤度の強いものに陽性を示す傾向が高かった。(3)組織学的には高分化型に陽性を示すものが多かった。 現在、手術材を用い、In situ hybridizationにてP53のm-RNAの増幅を細胞レベルでの発現部位の同定を行っている。また今後は、P53の非活性化と臨床的な予後との関係をretrospectiveに検索する事により、発癌に於ける癌抑制遺伝子の関わりを検討する。すなわち、前癌状態から発癌迄の各時期の採取組織切片を利用してp53モノクローナル抗体を使用した病理組織的な検討と合せて、Protooncogene,ationcogeneの増幅の時期を検討し、前癌状態でのハイリスク群の検討を行う予定である。
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