Research Abstract |
LPSによって惹起される歯周組織破壊過程におけるサイトカイン(Ck)の役割を明らかにする目的で,7週齢ウィスター系雄性ラットの上顎臼歯咬合面上に5mg/ml濃度のLPS(E.Coli由来)溶液を浸した綿棒を1時間にわたって静置することにより,歯肉溝からのLPSの浸透投与を図り,投与開始後3時間,2,7日目の第1・第2臼歯口蓋側辺縁歯周組織でのIL-1α,IL-1βおよびTNF-αの局在を免疫組織化学的に検討した。免疫染色は,PLP固定-EDTA脱灰クリオスタット切片を用い,ストレプトアビジン-ビオチン法にて行った。また,未処置ラットの材料についても同様の観察を行った。その結果,正常組織においては口腔歯肉上皮や口腔歯肉溝上皮の有棘細胞と基底細胞の一部および接合上皮(JE)の上層部,特にJE上端部付近の細胞がIL-1α,IL-1β並びにTNF-α陽性を呈した。骨芽細胞などの硬組織形成細胞もこれらのCk弱陽性であった。いずれのCkもほぼ同様の分布パターンを示したが,マラッセの残存上皮は特にIL-1βで強く染まった。投与3時間後,各上皮のCk染色性は増強した。JEでは,染色性の増強とともに陽性領域が拡大し,中にはJE全体が強く染色されるものもあったJE内および直下には各Ck陽性の好中球やMφが遊走し,歯肉・歯根膜線維芽細胞の細胞質や細胞間における陽性反応も明らかとなった。また,破骨細胞や前破骨細胞はIL-1βやTNF-α弱陽性であった。2日目,上皮や線維芽細胞の染色性は減弱する傾向を示したが,歯肉結合組織ではCk陽性の好中球やMφが増加していた。投与後7日目には,染色性の減弱とCk陽性浸潤細胞数の減少が進み,中には正常とほぼ同様の所見を呈するものも観察された。以上,LPS刺激によって歯周組織構成細胞から一過性に産生されるCkや浸潤細胞の産生するCkがLPS投与後の辺縁歯周組織破壊に関与する可能性をin vivoの実験系においても明らかにすることができた。
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