Research Abstract |
う蝕ワクチンの候補として注目されている S.mutans の菌体表層線毛様構造物である分子量19万の蛋白質抗原 (PAc)を用いたう蝕ワクチン開発において、より安全で有効性の高いペプチドワクチンが検討されるようになった。そこで申請者は、このPAcを用いてより最小単位で免疫原性の強く安全性の高いう蝕予防用ワクチンを開発することを目的とし実験を行なった。PAcと唾液成分との結合に最も関係深いとされるPAc分子中アラニンの豊富な繰り返し領域に着目し、その領域をすべてカバーするアミノ酸残基4個をオーバーラップしたアミノ酸残基19個のペプチドを合成し、その合成ペプチドに存在するT,B細胞エピトープの検討をB10コンジェニックマウスを用いて行なった。その結果、PAc(アミノ酸残基番号,226-244),PAc(301-319),PAc(331-349)PAc(407-425),PAc(264-282),PAc(279-297)にT,B両細胞エピトープが、PAc(241-259),PAc(2710289)PAc(346-364),PAc(391-409),PAc(436-454),PAc(219-237)にT細胞エピトープ、PAc(316-334),PAc(361-379),PAc(421-439),PAc(451-469),PAc(355-373)にB細胞エピトープが存在していた。これらペプチドから数種類選びだし免疫原性について検討すると、PAc(301-319),PAc(361-379),PAc(391-409)において優位にrPAcおよび免疫した自己ペプチドに対する抗体を誘導できることが認められた。特にPAc(361-379)は5種のコンジェニックマウスにおいて強い免疫原性を有し、その誘導された抗体はrPAcと唾液の結合を40%阻害することが認められた。さらにこのPAc(361-379)のT,B両細胞エピトープは少なくともPAc(361-377)に存在していることが部分ペプチドを用いて認められた。よってこのペプチドにヒトを用いた解析から認められたT細胞エピトープ[すでにHLA-DR8におけるT細胞エピトープは、PAc(316-334)に存在していることを認めている。]を連結することにより、マルチプルなペプチドワクチンの作製が可能となると考えられる。今後より詳細な数種のHLA-DRタイプにおけるヒトT細胞エピトープとアグレトープの解析を行なう予定である。
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