Research Abstract |
顎嚢胞症例のMR像を調査・検討した結果,内部に多量の角化物を容れた一部の歯原性角化嚢胞を除いた大部分の顎嚢胞は,T1強調画像では高信号に抽出される周囲脂肪組織よりも低い信号強度を,T2強調画像では低信号となる周囲脂肪組織よりも高い信号強度を示す病巣として描出され,Gd-DTPAを用いた経静脈造影T1強調画像では嚢胞壁様の構造が観察されたのに対して,T1強調画像で嚢胞の内容液が周囲脂肪組織よりも高信号を示した顎嚢胞が4症例見出された. 特異なMR信号を表した症例は含歯性嚢胞2例,歯原性角化嚢胞および術後性頬部嚢胞それぞれ1例であった.これらの症例ではGd-DTPA経静脈造影T1強調画像で嚢胞壁の描出が得られなかった. 症例の臨床,手術および病理組織所見を検討した結果,病理組織的に歯原性角化嚢胞と診断された1症例を含めて,嚢胞の内容が血液性であった点が共通していた. 症例の検討より,嚢胞内容物が赤血球あるいは血球変性物を多量に混じた液体である場合に特異なMR信号を呈することが考えられたので,血球成分の量がMR信号強度に与える影響を調べる目的で,段階的に希釈した全血と血清および血餅のMR値を計測した. その結果,T1値は,血清よりも全血が低い値を示し,両者とも濃度に比例して低くなった.濃度が高い全血ではT1比緩和時間が著明に低下し,血餅では最も低くなった.T2値では逆に,全血,血清とも濃度に比例して高値を示し,血清よりも全血が高く血餅が最も高値であった. すなわち,血球成分が多い嚢胞内容液ほどT1強調画像では高信号に,T2強調画像では低信号に描出されることが示唆された.
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