Research Abstract |
今回,咬合音の高周波成分を用いた早期接触歯の同定の可能性の検討を行うにあたり,複数点同時計測による震源探査の原理を考慮し,上顎各歯からの距離差が比較的大きい左右の耳珠前方3cmの頬骨部より加速度計を加圧し咬合音を採取した。 歯と咬合音採取部位との距離は歯列形態や顔面の大きさなどにより個人差が認められるので各被験者毎に上顎全歯を加振し,被験者固有の歯別の咬合音伝達時間差を求めた。歯別の咬合音伝達時間差は,各被験者間で個人差がみられるものの,いずれの被験者においても臼歯から切歯に移行するにつれて徐々に減少する傾向がみられた。この傾向は左側,右側とも同様であった。いずれの被験者においても歯別の咬合音伝達時間差にはすべて有意差(P<0.01)が認められ,個々の歯の識別が可能と考えられた。次に,干渉装置を用い実験的早期接触歯の同定を試みた。加振による個々の被験者の歯別の咬合音伝達時間差と実験的早期接触歯による咬合音伝達時間差の比較による同定を試みたところ,すべて同定することができた。 以上,本研究は咬合音の高周波成分を用いた歯別の咬合音伝達時間差によって個々の歯を明確に識別できることを明らかにし,その歯別の咬合音伝達時間差を用いることで全歯にわたって早期接触歯が同定できることを示したものであり,早期接触が顎機能に与える影響を考えると咬計を加圧し採取した。 今後,早期接触部位の性状の違いによる周波数の変化の検討を行い,各歯内における早期接触部位の同定の可能性を検討する予定である。
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