Research Abstract |
本研究では,Porphyromonas gingivalisとStreptococcus oralisの共凝集に及ぼす各菌体とフィブリノーゲンの前処理による影響や各菌体のフィブリノーゲンに対する結合親和性を調べることにより,フィブリノーゲンが共凝集を起こす菌へどのように作用して阻害を起こすのかを明らかにすること,さらに,P.gingivalisのもつプロテアーゼがフィブリノーゲンによる共凝集阻害にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした.その結果,プロテアーゼ非存在下ではどちらの菌体をフィブリノーゲンで前処理しても共凝集活性には影響を及ぼさなかったが,チオールプロテアーゼインヒビター存在下では,P.gingivalisフィブリノーゲンを前処理した時のみ共凝集活性が阻害された.このことより,P.gingivalisのもつプロテアーゼにより,フィブリノーゲンが分解されることが示唆された.^<125>I標識フィブリノーゲンを用いて両菌体との結合親和性を調べたところ,フィブリノーゲンはS.oralisよりもP.gingivalisに高い親和性をもつことが示された.^<125>I標識フィブリノーゲンと反応させた菌体およびその上清をSDS-電気泳動し,オートラジオグラフィを行ったところ,プロテアーゼインヒビター非存在下ではフィブリノーゲンは分解されたが,チオールプロテアーゼインヒビター存在下ではフィブリノーゲンはほとんど分解されずにP.gingivalisに結合することが示された.また,S.oralisに結合したフィブリノーゲンも認められたが,量的には,P.gingivalisに結合したフィブリノーゲンに比べると少なかった.以上の結果から,フィブリノーゲンによるP.gingivalisとS.oralisの共凝集の阻害は,主としてフィブリノーゲンがP.gingivalisに結合にすることにより生ずること,阻害効果を発揮するためには,P.gingivalisのもつプロテアーゼによる分解を受けないような環境が必要であることが示唆された.
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