Research Abstract |
本研究では,歯牙交換期における歯髄神経支配の変化を明らかにすることを目的とし,交換期に抜歯されたヒト乳歯を用いてその歯根吸収と歯髄内の神経線維の状態の変化との関係を免疫染色の手法と3次元立体構築法を用いて解明した。 1)交換期に抜歯されたヒト乳歯を用いてその歯根吸収と歯髄内の神経線維数の変化で固定し,EDTA脱灰液中で脱灰し,パラフィン包理を行なった。連続切片を作成し,ニューロフィラメントプロテインのABCキットを用いた免疫染色を行ない3次元的な再構築による分布状態を検証した結果以下のような知見を得た。 根部歯髄においては歯髄内を上行する血管に沿って太い神経線維が存在していた。また、血管周囲以外にも細い神経線維が上行しており、これは分枝しながら歯根部の象牙芽細胞層に達していた。 冠部歯髄においては、不規則に分枝した神経線維が密に分布していた。最も分布密度が高かったのは象牙芽細胞層直下で、Raschkowの神経叢を形成していた。 Raschkowの神経叢から象牙質方向へ伸びる神経線維は象牙芽細胞層を越えて、象牙前質まで侵入しているものも多数存在し、一部には象牙質内までの侵入をうかがわせるものも観察された。 2)神経線維分布の分布と歯根吸収との関係の検討 本研究に供した抜去歯牙はいずれも根吸収初期のものであり、HE染色による観察において歯根の外部からの吸収が認められた部位は2次象牙質の厚い形成が認められ、同部の周囲には神経線維叢の形成は認められなかった。
|