Research Abstract |
本研究は,てんかん患者などにおける歯肉切除後の再増殖の予防を目的とし,歯肉切除後の経過を観察し,切除後の経過期間と再増殖の程度,歯肉縁の経過,清掃状態,フェニトイン投与量などの諸因子との関わりについて検討した。年齢,抗痙攣剤の投与量,投与期間等を問診により調査し,術前,切除1週間後,1ヶ月後,2ヶ月後に全顎歯肉を対象とし,精密診査を行った。歯肉増殖の程度の判定に関しては,Sternの分類を参考にし,質的,量的変化を5段階に分類し,判定した。口腔内写真,石膏模型も判定の参考資料とした。患者は17〜27歳の男性10名で,抗痙攣剤は全員が3〜5歳時より投与されており,投与期間は,平均18.4年間であった。フェニトインの投与量は,200mgで全員共通であった。その他,バルプロ酸ナトリウム1200mgを4名,カルバマゼピン600mgを4名が併用していた。口腔内診査の結果,被験者全員からほぼ共通した所見が得られた。すなわち,術前の全顎歯肉には発赤,腫脹等の炎症症状が認められ,ポケットは平均4.7mmであった。増殖部位は,6名が全顎,4名が前歯部のみであり,増殖の程度はSternの分類でClassIIIが6名,ClassII,ClassIVが2名ずつであった。切除1週間後の歯肉組織は,びらん状態となっており,ポケットは平均2.5mmとなっていた。口腔清掃状態は1週間後が最も悪く,これは出血,疼痛等によりブラッシングが不徹底であったためと思われた。切除1ヶ月後では創面はほぼ治癒していたが,歯肉組織に発赤がみられ,Sternの分類で全員がClassIであった。切除2ヶ月後には全員がClassIIであり,軽度の量的変化があり,歯肉縁や歯間乳頭部での増殖が認められた。フェニトイン1日投与量200mgを服用し,歯肉切除後の清掃状態が不良な者においては,すべての者に歯肉切除後1ヶ月で再増殖傾向が認められ,2ヶ月後では歯間乳頭部に明らかな増殖が認められた。
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