Research Abstract |
歯をとり囲む口腔内環境は齲蝕感受性を決める因子として重要であり,pHが中性に維持されていれば石灰化が進行し,酸性側に傾くと脱灰が生ずる。 唾液中の糖タンパク質はエナメル質表面に付着してペリクルと呼ばれる有機性被膜となり,エナメル質への酸の浸透性を低下させたり,脱灰部位からのカルシウムイオンとリン酸イオンの拡散を阻止すると考えられている。 本研究では,唾液中の糖タンパク質がエナメル質の再石灰化にどの様な関連性を有しているのかをエナメル質の結晶成長に着目し,形態学的に検討した。 ヒト抜去上顎第一小臼歯の頬側面に直径1.5mmの円形windowを作製し,2カ所は切削エナメル質,他の2カ所は酸処エナメル質とした。 石灰化溶液はFeaginの石灰化溶液と,Feaginの石灰化溶液に唾液中に含まれる糖タンパク質であるムチンを添加したものの2種類を用い,灌流系石灰化装置にて再石灰化実験を行なった。 今回は,短期的な再石灰化について検討する目的で,浸漬期間は2日及び4日とした。 再石灰化エナメル質の形態を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察した結果, 1.切削エナメル質は酸処理エナメル質よりも再石灰化が強くなる傾向が見られた。 2.石灰化溶液にムチンを添加した場合には,石灰化溶液のみの場合よりも再石灰化が弱くなる傾向が見られた。 3.浸漬期間が長くなるにつれて再石灰化は強くなる傾向が見られたが,2日と4日では顕著な差は認められなかった。
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