Research Abstract |
Streptosporangium albidumが生産するポリオールマクロライド,アキュレキシマイシンは1,3-ポリオール鎖を基本骨格とした30員環のマクロライド化合物で,アグリコン部分には20個の不斉炭素が存在する.一般にマクロライド化合物の絶対配置はx線結晶解析により決定されている場合がほとんどで,結晶化しにくいポリエンおよびポリオールマクロライドはほとんど絶対配置が決定されていないのが現状である.著者は,アキュレキシマイシンの全絶対配置を決定することを目的として本研究を進めている.アキュレキシマイシン本体を用いた絶対配置決定は困難であるため,オゾノリシス,過ヨウ素酸酸化などの選択性の高い分解反応により取得された1,3-ポリオール化合物を用い,相対配置決定はRyconovsky法によりまず水酸基の相対配置およびアセトナイド環のコンホメーションの決定を行った.メチル基の相対配置はアセトナイド環のコンホメーションがチェア型をとる場合は^3J_<HH>の結合定数から,ツイストーボ-ト型をとる場合は2位の側鎖と両端のオキシメチン水素とのNOEの有無を調べることにより決定した.絶対配置は水酸基の数に応じて手法をかえ,偶数個の場合は励起子カイラリテイィー法を,奇数個の場合は改良モシャー法を適用した.一般に,励起子カイラリティー法は2個の不斉およびそれらの相対配置が関係すると言われているが,不斉炭素が一個しか存在しない場合でも2個のベンゾエ-トを導入すれば,その不斉炭素の絶対配置を反映したコットン効果を示すことから,本法は施光度ど同様な感覚でかつ非経験的にその符号を知ることができた.2個の水酸基にベンゾエ-トを導入することが困難な場合でも,CDスペクトルにおける良好な加成性を利用したCD差スペクトルを測定することで絶対配置を決定した.またモシャー法は一義的にある二級水酸基の絶対配置が決定できることから,これらの手法を相補的に適用することにより全ての絶対配置を決定した.アキュレキシマイシンの分解反応生成物の1個はスポラヴィリジンからも取得され,両者を比較することにより,スポラビリジンの一部の絶対配置も明らかとなった.また,アキュレキシマイシンから所得された分解反応の中には,ポリオールやポリエンマクロライド化合物の分解から取得される生成物と類似したものもあり,この手順で行うことによる絶対配置も決定可能と考えている.
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