Research Abstract |
ホスファチジン酸(PA)ホスファターゼはde novoリン脂質合成系において、PAを脱リン酸化しジアシルグリセロール(DG)を産生する酵素である。我々はこのPAホスファターゼの精製を試み、ブタ胸腺膜画分より動物細胞では初めて分子量83,000の酵素の精製(Kanoh et al.JBC,267,‘92)、及びそのcDNAクローニングにも成功した。しかし、このcDNAを発現ベクターに組み込んでCOS7細胞に発現させたところ、タンパク質が発現しているにも関わらず、PAホスファターゼの活性は認められなかった。タンパク質の発現についてはcDNAより予想されるアミノ酸配列を用いて作成した抗ペプチド抗体によるウェスタンブロッティングで検出した。さらに昆虫細胞や酵母を用いて発現実験を行ったところ、いずれの場合もタンパク質が発現しているにも関わらず酵素活性は認められなかった。また、精製ブタ83KPAホスファターゼのアミノ酸配列を解析しなおしたが、やはりこのcDNAと一致していた。以上のことから、この分子量83,000のタンパク質はPAホスファターゼではないと考えられ、PAホスファターゼの精製を再度行った。現在まで、PAホスファターゼであると考えられる分子量36,000のタンパク質を約40,000倍まで精製したところであり、今後このタンパク質のアミノ酸配列の決定及びcDNAクローニングを行う予定である。
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