Research Abstract |
電解質代謝をつかさどる重要な役割を担っているアルドステロンは,副腎皮質ミトコンドリアにおいて11-デオキシコルチコステロンからコルチコステロン,18-ヒドロキシコルチコステロンを経由して生合成されている。ウシ副腎におけるこれらの反応はすべて単一CYP分子により触媒されているが,特に最終ステップのみがアスコルビン酸塩添加により飛躍的に促進されることが明かとなった。これらの結果から,既知の電子伝達系とは別に,bタイプチトクロム(Cyt.b)およびSemidehydroascorbate reductase(SDAR)がこの反応に特異な電子伝達成分として関与している可能性が示唆されるに至っている。ラット肝臓ミトコンドリア外膜由来OMM-CytbはAkio Itoによって精製され,その抗体がSDAR活性を特異的に阻害することから,両者は同一分子であることが予想されている。本研究ではウシ副腎におけるステロイド調節機構の解明を目的として,副腎ミトコンドリア画分を原料とし,吸収スペクトルを指標としてCyt.bの精製を試みた。はじめにウシ副腎100個から髄質部分を取り除き,ミトコンドリア画分を常法により調製した。低張液中でミトコンドリアを破壊した後,Itoの方法に基づきTrypsinによる可溶化処理を行った。その後Sephadex G-100,DEAE-Celluloseカラムにより極めて効率よくチトクロームの吸収を示す画分が得られ,さらにハイドロキシアパタイトの溶出条件を注意深く検討したところ,最終的にSDS-PAGEゲル上単一バンドが得られ,この標品は分子量約12700,赤色で明らかにbタイプチトクロムの吸収スペクトルを示すことが確認された。最終的には,約7.6gのミトコンドリア画分より0.31mgタンパク質標品が得られ,チトクローム含量を指標としてTrypsin可溶化後の画分から313倍に精製された。今後さらにミクロゾーム由来のCyt.b5との差について,またSDAR活性を指標として精製を試み,再構成実験によるアルドステロン調節機構に迫りたいと願っている。
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