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¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1994: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
テトラクロロエチレンは,各種産業用に使用され,その廃棄や漏出のため非常に微量ではあるが,かなり広範囲の地下水や大気から検出されている.また,PCEは肝臓のシトクロムP450(P450)によって代謝されることがすでに明らかにされており,その毒性発現にはP450を含む薬物代謝酵素が何らかの形で関わっていることが考えられる.本研究では,テトラクロロエチレンの毒性機構を解明するための一環として,ラット肝薬物代謝酵素に及ぼすテトラクロロエチレンの影響についてin vivoおよびin vitro系で検討した. in vivo 7-ペントキシレゾルフィンおよび7-ベンジルオキシレゾルフィンの脱アルキル化酵素活性はテトラクロロエチレン投与により用量依存的に増加し,最も増加した2000mg/kg投与群におけるそれらは対照群のそれぞれ4.6および6.1倍であった.また,抗CYP2B1/2抗体を用いてイムノブロッティングを行ったところ,対照群では認められなかった2本の強いバンドが1000および2000mg/kgのテトラクロロエチレン投与群で認識された.一方,薬物代謝第二相反応酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素,グルタチオンS-転移酵素およびDT-ジアホラーゼ活性も高用量のテトラクロロエチレンで有意に増加し,それらの誘導率は1.4〜3.9倍であった.このようにラットにおいてテトラクロロエチレンは薬物代謝の第一相および第二相反応酵素の両方を誘導し,特にCYP2BサブファミリーのP450を強く誘導する化合物であることが示唆された. in vitro フェノバルビタール処理ラット肝ミクロゾームの7-ペントキシレゾルフィンおよび7-ベンジルオキシレゾルフィンの脱アルキル化酵素活性は2.0mMのテトラクロロエチレン添加によりそれぞれ80および81%阻害された.また,Eadie-Hofsteeプロットからこれらの阻害はいずれも非競合的阻害であることが示され,阻害定数はそれぞれ0.16および0.29mMであった.さらに,テトラクロロエチレンはフェノバルビタール処理ミクロゾームの7-エトキシクマリン0-デエチラーゼ活性もわずかに阻害し,その阻害パターンは競合的阻害であった.しかし,フェノバルビタール処理ラット肝ミクロゾームの他のP450依存性酵素については,テトラクロロエチレンによる著しい変化は認められなかった.一方,7-エトキシレゾルフィン0-デエチラーゼ,アニリン4-ヒドロキシラーゼおよびテストステロン6β-ヒドロキシラーゼ活性は,β-ナフトフラボン,イソニアジドおよびプレグネノロン16α-カルボニトリル処理によりそれぞれ誘導されたが,テトラクロロエチレンによる活性阻害は認められなかった.以上の結果より,テトラクロロエチレンはフェノバルビタール誘導性のP450依存性酵素を非競合的あるいは競合的に阻害し,CYP2B1/2がテトラクロロエチレンの代謝および毒性に関与していることが推察された.
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