Research Abstract |
PCR法による抗酸菌の検出は,迅速性,感度の点で従来法に比べ優れており,臨床検査として期待されている。しかしながら,従来法の塗抹・培養検査で検出されず,PCR法ではじめて検出されるものが,我々の検討の結果約20%に認められた。その原因として,我々は細胞壁を欠損し細胞内で代謝しているが増殖できないL型菌またはspheroplast型(休眠菌あるいは潜在菌で乾酪巣内の苛酷な条件で生存するために形態を変化させる)結核菌の存在を想定した。生体内のL型菌の証明は,結核の再燃の原因として重要と考えられる。そこで本研究は,細胞壁の欠損したspheroplast型結核菌をin vitroで作製し,PCR法と小川培地での研究結果を比較し,その検出意義を明らかにすることを目的とした。spheroplast型結核菌は,結核菌標準菌株をアルブミンを除いたDubos液体培地に,グリシン,ショ糖,リゾチームを添加し,振とう培養を続け作製を試みた。spheroplast型結核菌の同定は,チールネルゼン染色及び抗BCG抗体染色を行い,光学顕微鏡にて行なった。約3週間の後,Spehroplast型結核菌の作製に成功した。spheroplast型結核菌と結核菌標準菌株の菌液の希釈系列を作り,それぞれ同量の菌液をPCR法と従来の培養に用いられている1%小川培地で検出を試みた。その結果,PCR法では標準菌株,spheroplast型ともに,およそ4個/mlより検出可能であった。一方、小川培地を用いた培養法では,標準菌株はおよそ400個/mlから3コロニー検出できたが,speroplast型結核菌は検出できなかった。spheroplas型結核菌と同様の存在様式が,臨床検体において塗抹・培養法陰性でPCR法のみ陽性の原因の一つである可能性が示唆された。
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