Research Abstract |
[目的]汚れ,糊つけなどにより布の空隙形態は大きく変化し,通気性に多大な影響を及ぼす。布の通気性に関しては,申請者らが開発した自作装置を用いて多重層法により測定している。布の厚さ(L),デジタルマノメーターによる布表裏の圧力差(ΔP)および布間隙を通過した空気流量(K/t:K=定数,t=時間)を測定すると,ΔPt^2=SLt+I(S,Iは定数)なる一次式が成立し,その勾配値(S)から通気性を相対的に表すことが可能であることを明らかにした^<1)>。本研究は,通気性の変化から糊つけ布の空隙構造を明らかにすることを目的とし,糊つけ布を想定したモデル試料およびメッシュスクリーン糊つけ布を用いて両面からの通気性を測定し,Sの比較検討を行った。 [方法]糊つけ布の内部構造を解析するために,試料として表裏の空隙断面積の異なる真ちゅう製空隙モデル試料,糸密度の異なる2種のモノフィラメントメシュスクリーン(420,250/inch)ならびにポリエステルタフタ/モスリンをそれぞれ2枚重ねたモデル布を作製した。さらに,メッシュスクリーン2種(以下420T,250Tと略す)について,それぞれPVA0.5〜5%濃度で超音波を用いて均一に糊つけ(1min)を行い,自然乾燥後,糊の付着率を求めた。各試料について両面からの通気性を測定した。 [結果](1)空隙モデル試料について両面からの通気性の勾配値の比(空隙断面積小/大)をとると1.30であった。(2)空隙モデル試料と同様に,420T/250Tおよびタフタ/モスリンのモデル布の場合も,密組織側から通気したときのSが粗組織側からの場合より大きく,通気性が小さい。(3)糊つけ布(420T,250T)は,それぞれ濃度および付着量の増加とともに通気性は小さくなったが,各濃度における両面からの通気性に違いが認められなかった。 1)福井典代,所康子,藤原康晴,山下伸典:科学教育研究,17,68〜75(1993)
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