Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1994: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
本研究は,戦前期日本における科学技術動員に関する国内資料の全般的な調査・収集と,科学技術動員が国家総動員体制の中でどのような役割を果たしてきたかを動員中枢機関を調べることで明らかにすることであった。 本研究年度において刊行された注目すべき関係資料に,國學院大學図書館所蔵『井上匡四郎文書』(マイクロフィルム版)がある。井上は,1942年1月31日から1944年12月5日まで初代技術院総裁をつとめた人物で,その膨大な文書の一部には当然ながら技術院関係の貴重な資料が豊富に含まれている。東京大学総合図書館所蔵の『国策研究会文書』に並ぶ資料集である。また,本年度に刊行されたもう一つの基本資料に『大本営陸軍部「大陸命」「大陸指」総集成』がある。国家総動員が戦争遂行を目的になされたことを考えれば,国家総動員,またその一部の科学技術動員と陸軍の作戦を関係づける必要があるのは言うまでもない。この『総集成』はその作業を進める上での必須のものとなろう。これらの重要資料を購入するために,資料複写のための使用を予定していた資金の多くを回した。 さて,科学技術動員と国家総動員体制との関係を考える際に参考になると思われる視点が経済研究者の方から出てきた。岡崎哲二・奥野正寛編『現代日本経済システムの源流』(1993年刊)は,<現代日本経済システムの原型は戦時中の国家総動員の中で形作られた>と主張している。科学技術システムもある程度経済システムとパラレルなものと見ることができる。現代日本の科学技術システムが形作られる上で,戦時中の国家総動員はどの程度影響を与えるものであったか。経済分野との比較が,歴史的・国際的比較に並んで行なわれるべきである。
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