Research Abstract |
本研究は、高度経済成長期以降、東京大都市圏において都市内部の中心地が遂げた変化を,小売業機能の分布から明らかにすることを目的とする。そのために,二つのスケールにおいて分析を行う。第一の分析では,市町村を地区単位として,大都市圏全体における小売業の立地変動を明らかにする。第二の分析では,大都市圏周辺部に位置する市町村を対象地域とし,機能階次と中心地階層の変化を明確にする。最後に,事例市町村間に見られる小売業中心地の再編過程の違いを,大都市圏全体の小売業機能の時空間構造と結び付けて考察することにより,大都市圏における中心地システムの変化についてのメカニズムを解明する。 分析の結果,まず大都市圏に関しては,中心部への近接性によって各市町村の保有する相対的中心性に差が存在するものの,機能集積域が大都市圏中心部から周辺部へ進行したことにより,その差は平均化の方向に向かっていることが明らかになった。次に,事例市町村に関しては,いずれの中心地システムも,機能集積に伴い機能階次および中心地階層の再編が行われており,それは最高位中心地を核とした機能集積域の拡大によるものであることが判明した。この中心地システムの再編成には,大都市圏中心部への近接性に応じたタイムラグが認められ,大都市圏中心部への近接性が高い市町村内部ほど,機能集積域の拡大が顕著に進行していた。 以上の分析から,機能集積域の拡大が,市町村間でも市町村内部でも進行しており,その結果,大都市圏における小売業格差は縮小していることが明らかになった。当該動向を中心地動態論の立場で解釈すると,大都市圏内部における中心地システムは周辺地域で生じる超過利潤を消滅させるように変化すると考えられる。
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