Research Abstract |
1.現実に展開している水利関係域を1965,1973,1989年の4年次において摘出したところ、全国的には,水利関係域が自然空間を離れ、より社会空間としての性格を強く持ちつつあることが明らかとなった。 2,しかしながら、水利関係域の拡大、社会空間化は全国一様ではなく、以下の4タイプに類型化される。 (1),中央政府によって水資源開発・計画が行われている利根川、木曽川等において、都道府県レベルを超えた水利関係域の形成が図られている。 (2),広島、金沢等、広域中心都市の水源となっている河川(太田川、犀川)でも、隣接河川(江ノ川、手取川)と水利関係域を接合させつつあるが、隣接河川の水源としての役割は補完的機能にとどまっている。 (3),一定規模の人口(約20万人)を有する都市の場合、河川を水源とした水道事業が行われており、近隣河川の水利関係域が明示的に形成されている。 (4),人口規模が小さな市町村が自然流域に位置する河川の場合、水道水源が地下水の場合が多く、水利関係域が潜在的なものにとどまっている。 3.水利関係域を拡大する契機としては、流域人口の増加が前提となるが、中央政府による水資源開発・計画の水系指定、都道府県レベルの他方自治体の水道政策も大きく関わっている。 4.水利関係域の将来的展開を考えた場合、当該地域の人口動向が最大の要因となるが、当該自治体の水道政策と関係河川の自然条件が将来動向の修正要因となるであろう。中央政府の水道源政策は、基本的な重要河川において既に水系指定が終了していることから、水利関係域を変化させていく要因としては弱いと思われる。
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