Research Abstract |
本研究では,物性の異なる4種類の岩石を対象に野外でひずみ変化を観測し,岩石の熱風化の可能性を探ることを目的としている。当初,観測は1994年7月から始める計画であったが,試料の採取や試料の物性値測定などに手間取ったことと,観測期間を2年間に延長したため,12月からの開始となった。このため,研究の完了は1996年冬以降にずれ込む見通しとなった。今年度これまでに行ってきた結果は,以下のようにまとめられる。 1.実験に用いた岩石試料は花崗岩,硬質砂岩,凝灰質砂岩,凝灰岩の4種類である。花崗岩は加波山産で真壁町の石材店,硬質砂岩は笹野層産で八王子市の採石場,凝灰質砂岩は稲子沢層産で鋸南町の採石場,凝灰岩はつくば市内の石材取扱店からそれぞれ調達した。 2.これら試料の強度を調べるため,圧縮試験と引張試験を筑波大学で実施した。その結果,圧縮強度,引張強度はそれぞれ花崗岩が,1199kgf/cm^2,84kgf/cm^2,硬質砂岩が2163kgf/cm^2,248kgf/cm^2,凝灰質砂岩が153kgf/cm^2,14kgf/cm^2,凝灰岩が97kgf/cm^2,17kgf/cm^2であった。 3.一方,各岩石について観測用試料(高さ5cm,直径5cm)を作製して5種類の溶液(H_2O,Na_2SO_4,MgSO_4,Na_2CO_3,CaSO_4)を含浸させ,自然乾燥後それぞれの試料にごとに弾性波速度を測定した。溶液による弾性波速度の違いは,顕著には認められなかった。 4.溶液を含浸させた試料は,表面にひずみゲージと熱電対を貼り付けて日本大学文理学部7号館(東京都世田谷区)の屋上に設置し,リモートスキャナーを用いて1時間間隔でデータを観測した。試料の風化条件は,a)日射だけを受ける条件,b)日射と湿度変化を受ける条件,c)日射,降水,風の変化を受ける条件の3タイプである。なお,ひずみと温度の観測期間中は,同時に日射量・降水量・気温・湿度の気象観測と1カ月ごとに降水のpHの測定を行った。 5.1995年12月からの観測の結果,a)の条件の試料には温度変化に対応したひずみ変化が認められた。また,b)の条件の試料では表面に塩類の析出が生じた。c)の条件の試料のうち凝灰岩の試料では,直径3mm程度のピットが表面に生じた。b),c)の条件の試料におけるひずみ変化はa)とほぼ同様であるが,物性値には何らかの変化が生じていると推測される。
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