Research Abstract |
本研究では,学習者による説明の理解を強化する新しい方法として,意識的に学習者の理解過程に認知的負荷(心的作業)を与える計算機メカニズムについて検討した.負荷を与える上で重要な点は,学習者の理解能力に合わせて負荷の大きさを制御することである.負荷を乗り越えることに学習者の注意を向けさせることが必要となる.本研究では,まず,説明内容を既有知識に関係づけて自らの知識を構造化する過程を説明理解とみなし,理解の結果得られる知識構造を意味ネットワークとして表現した.また,説明内容からこのネットワークを組み立てる作業を理解における認知的負荷とみなし,学習者に与える説明の量を調整することで,学習者が行わなければならないネットワークの組立作業量を適度に制御するメカニズムを開発した.この制御メカニズムでは,説明を与える前に,学習者の理解にかかる負荷を見積もる機能も実現している.さらに,ネットワークを組み立てる演習を通して,精度よく,学習者の負荷を予測することを可能にしている.また,グラフィカルに意味ネットワークを記述させるマンマシンインタフェイスを開発することで,学習者の注意を負荷に向けさせる工夫を行った.以上の研究成果については,人口知能関連の国際会議および電子情報通信学会研究会において発表を予定している. さらに,本研究では,負荷を伴った場合に,理解の結果得られる知識構造の定着度が高まることを確かめる実験を行った.32人の被験者を対象に説明の理解を行わせた結果,ある一定以内の負荷の大きさであれは,負荷を与えたほうが有意にに知識定着度が高まったが,負荷が大きい場合には逆に定着度が低くなり理解に悪影響を及ぼす傾向が見られた.このことから,負荷を与える効果が確かめられたと同時に,開発した負荷制御メカニズムの必要性も確認することができた.本実験についての研究成果は,人工知能学会誌に掲載される予定である.
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