Research Abstract |
小学校低学年の児童の中には,様々な理由で書字学習がスムーズに進まない児童が少なからず存在している。その状態像のひとつとして,不適切な筆圧にる書字を観察することがある。筆圧が高すぎれば,学習時の疲労が激しく長時間の学習が困難であろうし,逆の場合には,正確な字形がとれないなどの問題が生じる。そこで,本研究はこのような筆圧の状態を改善させるための手だてを探ることを目的として実施された。特に,言語教示を中心として働きかけにより,どの程度自己の筆圧をコントロールできるようになるかを検討した。被験者は平仮名書字学習の初期段階による1年生男女2名ずつ,計4名である。この4名を対象にして,多少の平仮名書きが可能となる時期,クラスでの一斉指導がほぼ終了する時期,ほぼ平仮名書きが安定する時期の3回にわたり,次のような課題状況下における筆圧を筆圧測定器により測定し,同時にビデオ記録した。表現した材料は,氏名,平仮名12文字,数字,幾何学図形である。これらの材料を,特別な教示が与えられない状況と,2段階の強弱をつけるように言語指示が与えられた状況において表現する際の筆圧を測定した。すなわち,言語教示に応じた随意的な筆圧コントロールの発達的な変化を検討し,障害児に対する筆圧指導の基礎資料の収集を行った。その結果,一般的な指導方法としてよく利用される文字の「なぞり」をさせた場合には,書字スピードが落ち,筆圧が上昇する傾向が見られた。また,読みの安定に伴い言語教示に伴う筆圧のコントロール能力は向上するが,筆圧を下げる教示に比べて,上げる教示の方が効果が現れ易かった。また,筆圧の検討を行う際には,筆記具の把持の仕方や視覚的な運筆制御機能の状態などとの関係も考慮する必要があることが示唆された。
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