Research Abstract |
本研究では,情報通信ネットワークの入力過程として研究されているマルコフ再生型入力過程について研究を行い,以下の成果を得た. バッファ容量がbのときのセル廃棄率をL(b)とすると,bがある程度大きければlogL(b)〜γb(γは定数)という関係が成立することが,単一のマルコフ再生型入力(MAP)を持つネットワークについて知られている.統計多重されたネットワークでも,複数の入力を重畳したものを1つの入力と考えればこの理論が適用できるが,その場合,入力を記述するMAPの状態数が膨大になるため,γを数値的に求めることが難しくなる.本研究ではこの問題点に着目して,MAP入力の重畳がセル廃棄率とバッファ容量の関係に及ぼす影響を調べた結果,その影響がある意味で加法的である,ということがわかった.具体的には,重畳されたMAPを入力とするネットワークにおけるγは,個々のMAPの変換行列に関する非線形方程式を連立させた方程式系を解くことによって求められる,というものである. この結果を利用すると,重畳されたMAPを入力とする場合のγの計算で扱う行列の大きさは,個々のMAPの行列と同程度で済む.しかし,MAPの重畳によって解くべき非線形方程式が連立方程式系となるため,やはりそのままでは数値的に解くことは簡単ではない.そこで,上の結果を導く過程で示したγがMAPの変換行列の最大固有値の和として与えられる性質を利用して,γをより効率的に求める方法を開発した.
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