Research Abstract |
本研究の理論的側面では,高次統計量利用のウィークポイントを補うべく信号生成モデル,すなわちパラメトリックモデルを導入して実用化への見通しをねらい,ポアソンインパルス過程で駆動される線形時不変システムを定係数微分方程式でモデル化することからはじまる.次に,線形システムの出力過程,即ち,ショット雑音を離散化して離散線形システムを得た後,抽出すべきポアソンインパルス列のパラメータの推定式表現を離散システムのパラメータと離散化過程の2つの異なった次数の統計量の組合わせにより得る.なお,統計量次数は2次以上を用いるものとし,また高次統計量の推定の信頼性を考慮して基本的に次数の低い統計量から順次用いるものとする.たとえば,2次と3次,2次と4次のような現実から逸脱しない範囲でのあらゆる組合わせを考え,その可能性を吟味した.また一方,要素波形の推定は微分方程式系パラメータの推定問題に置き換えて考えた. 一方実際的側面では,開発された方法の妥当性及び有効性を検証するため,計算機による大規模なモンテカルロシミュレーションを行った.そこでは,ポアソンショット雑音のパラメータを離散化過程の異なった次数の統計量の組合わせによって推定する問題を取り上げた.特に2次と3次統計量の組合せと2次と4次統計量の組合せについて詳細に取り扱った.その結果,密度推定では,離散化過程の周辺分布が対象であるばあいでも,直観的な理解に反し2次及び4次統計量の組み合わせによる方法が,2次及び3次統計量の組み合わせによる方法と比較して,必ずしも優位ではないことが示された.このことは,おそらく密度推定式はキュムラント関数から導かれており,密度が高くなるに従って周辺分布がガウス型に近づくため,4次キュムラントが小さくなってしまうことに起因すると思われる.また,要素波形推定は,2次統計量を用いてそのパラメータ推定を行うので,良好な結果が得られた.その他の次数の統計量の組み合わせについては,今後の課題である.
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