Research Abstract |
本研究では,決定性文脈自由言語を受理する決定性プッシュダウンオートマン(DPDA)の構造にある妥当な制約を課した部分族を対象として,計算論的学習理論のパラダイムに基づく帰納推論アルゴリズムを開発することを目的としている。その基礎構築のため,対象の言語族を特徴づける諸性質を明らかにし,その族に対する決定問題を解く効率的な判定アルゴリズムを開発することも研究対象である。 まず,DPDAのスタック記号をただ1種類に限定した決定性カウンタ(DROCA)と呼ぶ部分族を対象とし,次の結果を得た。DROCAの受理方式の違いによる言語族間の関係および各言語族の閉包性を明らかにした。続いて,空スタック受理式および実時間最終状態受理式DROCAに対する多項式時間包含性判定アルゴリズムをそれぞれ提案した(前者は1995年電子情報通信学会英文論文誌E-D分冊掲載予定。後者は同論文誌投稿中)。この結果を利用することで,これらDROCAに対する正則性判定が多項式時間で可能であることも明らかにした。これらは,DROCAの上位の族で,DPDAのスタックを底の1記号を除いてただ1種類に限定した決定性1カウンタオートマンに対して,包含性判定が非可解であること,指数オーダの時間量の正則性判定アルゴリズムが提案されているだけであることに比べ対照的な結果である。 更に,学習アルゴリズムについては次の結果を得た。実時間空スタック受理式DROCAに各入力記号に対し推移規則を高々1つに限定する等の制約を課した部分族に対する正の例からの極限同定アルゴリズムを開発した。これは,入力記号数を定数とみなせば多項式時間で同定可能である。また,接尾辞決定性正則言語と名付けた正則言語の真部分族に対する正の例からの多項式時間極限同定アルゴリズムを開発した。
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