Research Abstract |
本研究の目的は,ソフトウェア開発プロセスから収集されたデータの定量的かつ客観的な分析結果に基づいて開発プロセスの改善策を提示するアルゴリズムの開発,及び,その改善策を評価するシミュレーションシステムの設計を行うことである.今年度は,先ず,現状のソフトウェア開発プロセスの評価に基づいて,開発プロセスの改善を定量的に進めるための枠組について提案した.提案した枠組は次の(1)〜(5)の作業で構成される.(1)ソフトウェア開発プロセスを一般化確率ペトリネットを用いて形式的に定義する.(2)その定義の下で現状プロセスの問題点を分析する.(3)分析結果に基づいて,プロセスの改善案を複数作成する.(4)シミュレーションにより改善案を品質,費用,納期の3つの観点から定量的に行い、最適な改善案を求める.(5)改善案に基づいてプロセスを実行する.更に,実際のソフトウェア開発プロセスに対して改善を行ってきた.具体的な改善策としては,レビュー・テスト手法の変更,工数割当方法の提案を提示した.なお,枠組の基礎となっているペトリネットモデルには次の(A),(B)に示すような特色がある.(A)ト-クンが属性(プロセス経過時間,作業要員数,残存フォールト数等)を持っている.(B)トランジションには時間の概念と,ト-クンの属性値を更新するための操作が付加されている.こうした(A)と(B)はいずれもソフトウェア開発プロセスの記述のために拡張,導入した機能である.更に,提案する枠組の適用を支援するためにシミュレーションシステムを設計・試作し,実際のソフトウェア開発のデータを用いて,提案するモデルの妥当性についても議論した.
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