Research Abstract |
1 仕様の定義 個別の作品を統合するための各作品の独立性の維持と,オブジェクト指向の特徴であるクラスの再利用性や拡張性を両立させるために,ワールドと呼ぶクラス空間を木構造に結合して利用する言語仕様を定義した. この方式では,(1)異なるワールド間では独立したクラス空間を利用できる,(2)上位ワールドのクラスを下位ワールドで利用できる,(3)上位ワールドのクラスの機能を下位ワールドで拡張できる,などの独立性と再利用性を両立できることを確認した. 2 実現方式の提案 2種類のクラスベクタを利用する実現方式を提案した.各クラスベクタは,原型クラスベクタと複写クラスベクタと呼び,それぞれ,ワールド内でのクラス情報の定義用と,上位ワールドで定義されているクラスに対するメソッドの追加によるクラス拡張に利用し,ワールド間のクラスの独立性と再利用性を両立させている.また,原型クラスベクタと複写クラスベクタでは,共通する情報を共有することにより,ワールドの利用によるメモリ消費量の増大を制御している. ワールド方向のメソッド探索を考慮したメソッドキャッシュ方式を導入し,ワールドを越えたキャッシュの共用が行なえるようにしている.これにより,ワールドの導入によるメソッド呼び出し速度の低下を抑制するとともに,キャッシュ情報のワールド間での有効利用を実現している. 3 試作システムの構築と評価 試作システムにより,(1)ワールドによるクラス空間の独立性と再利用性が確認できた.(2)ワールドによる複数のクラス空間が作成されるにも関わらず,従来のオブジェクト指向方式に対するメモリ使用量の増加を抑えられることが確認できた.(3)ワールド方向のメソッド探索が増加するにも関わらず,従来のオブジェクト指向言語と同等の処理速度が得られることを確認した. 研究成果の一部は,情報処理学会,記号処理研究会で発表した.
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