Research Abstract |
本研究は,教示と学習のメカニズムを計算量理論の観点からとらえる枠組みを構築し,それらの関係,違いを情報科学的に解明することを目的とするものである.本年度は,まず,PAC学習可能性を完全に特徴づける尺度として知られている,Vapnik-Chervonenkis次元(VC次元)について,その計算量に関する諸問題を解決した.具体的には,VC次元を求める問題と,O(log^n)変数の論理式の充足可能性問題との間の相互の多項式時間還元を与えることによって,この問題がNP完全でもなく,かつ多項式時間では解けないという強い状況証拠を与えることに成功した.こここまた,VC次元の様々な拡張に対しても同様な結果を得ている. 次に,「反駁学習可能性」を,PAC学習の枠組みにおいて定式化し,その特徴付けを行った.反駁可能性とは,想定している仮説空間の中に目標概念をうまく説明するものが存在しない場合に,その仮説空間全体を反駁できることをいい,原理的には,仮説空間そのものの善し悪しを判断する基準となる.ここで定義された反駁PAC学習可能性は,多項式サンプルという観点からは,通常のPAC学習可能性と同値であることを証明した. さらに,コンパクトに表現された文字列に対する多項式時間の文字列検索アルゴリズムを与えた.これは,テキストそのものは長大だが,そのテキストがある規則を用いてコンパクトに表現されているとき,一旦テキストを展開せずに,そのままの形で別の文字列を検索するという新しい手法である.今後は,複数の文字列への対応,近似を許した検索などへの様々な拡張が考えられる.
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