Research Abstract |
本年度はガングリオシドGD3の機能を研究するための第一歩として,エクスプレッションクローニング法によるGD3合成酵素のcDNAクローニングを行った。まず,ヒトメラノーマ細胞よりcDNAを合成し,それをエクスプレッションベクターpCEV18に組み込みcDNAライブラリーを作製した。cDNAライブラリーをCHOP細胞にトランスフェクションし,GD3に対するモノクローナル抗体R24とセルソーターを用いて,目的のcDNAを持つ細胞を濃縮した。そこからcDNAを取り出し,大腸菌で増やしたあと再びCHOP細胞へ導入した。以上の過程を繰り返すことにより,最終的に1つのクローンを単離した。得られたcDNAは全長1.7kbpで,コードされているタンパク質はアミノ酸341残基からなり,膜貫通領域をN末端付近に持つ2型の膜タンパク質であった。このタンパク質がGD3合成酵素本体であることを,本タンパク質を分泌タンパクとして発現させGD3合成活性を測定することより証明した。本酵素はα2,8-シアル酸転移酵素として初めてクローニングされたものであり,アミノ酸配列上にはシアリルモチーフと呼ばれるシアル酸転移酵素に特徴的な配列が存在することから,シアリルモチーフの役割を考える上で重要な知見を与えた。次に,得られたcDNAをCOS細胞を用いて発現させ,酸素学的な解析によって本酵素の基質特異性を調べたところ,本酵素がGD3だけでなくGQ1bの生合成にも関与することがわかった。このことは,ガングリオシドの生合成経路を考える上で非常に興味深い。今後,このcDNAを使い,ジーンターゲッティングや細胞表面の糖鎖の改変を行ってガングリオシドGD3およびGQ1bの生物機能を解明して行く。また,遺伝子解析によって,糖鎖の発現制御なども明らかにしていく予定である。
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