Research Abstract |
酵素反応の速度論的解析にCaged化合物を用いる際に生じる問題点を明らかにするため,ニトロベンジル基をもつCaged化合物を用いて,種々の条件における酵素活性に対する影響を調べた。まず,Caged化合物の光分解の効率は,その溶液のpH,温度,暖衝剤の種類,硫安の存在,Caged化合物の種類によらず一定であることが分かった。ただし,アルカリ性側では反応生成物の分解が起こる場合があった。また,励起波長は254nm,365nm(Nd:YAGレーザーの4倍波,3倍波にあたる)のどちらでも分解効率は変わらなかった。 次に,Nd:YAGレーザー266nmの光照射によるCaged化合物の分解速度について調べた。pH4〜8の範囲では,分解速度はほぼpHに比例し,酸性側でより速くなった。しかし,光分解により生成するアミノ酸量は,Cagedアミノ酸の濃度に依存せず,ほぼ一定の値となった。つまり,そのCaged化合物の初期濃度をある濃度以上に上げても,特定の条件での分解濃度は増加しないことが分かった。このことから,光分解によって生じる有効濃度を上げるためには,光の強度を上げるか,分解効率の高いCaged化合物を用いることが必要であることが明らかとなった。 そこで、より高い光分解能をもつジメトキシベンゾイン型のCaged化合物の合成を行なうことにした。Caged化する生理活性物質として,高い光分解活性を示すリン酸エステル結合を含むCaged ATPを選んだ。まず,ジメトキシベンズアルデヒドからジメトキシベンゾインを合成し,次に,塩化ホスホリルによって直接その水酸基をリン酸化しようとしたが,副反応が問題となり,目的産物を効率良く得ることができないと予想されていた。そこで,リン酸化する水酸基以外の反応性官能基を保護した後,リン酸化を行なう方向で現在合成を試みている。
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