Research Abstract |
哺乳動物における中枢神経回路網の損傷後の修復可能性を明らかにするため,ラットを用いた実験を行った.既に報告のとうり,脊髄髄節を同種の胎児のもので置換された新生ラットは正常と同等までの機能的な回復を示した.この再生現象は宿主側に再生する能力が備わっているためなのか,移植された胎児組織に再生を促進する作用があるためなのか,またはその両方なのかを調べるため,同じく新生ラットの脊髄を切断したところ,脊髄を通過する神経路の著明な再生をみた. 使用したラットは生後1-3日のもので,脊髄の半側を胸髄レベルで鋭利なナイフによって切断し,一日の手術毎に無作為にその1/3から1/2のラットを選び,すぐさま灌流固定し,全例で確実に切断がなされていることを確認した.1-5週間生存させた後、組織を調べた.一部のものは灌流前に大脳皮質運動野および赤核にWGA-conjugated-horseradish peroxidase (WGA-HRP)を注入し脊髄下降路を標識した.その結果,最も良好なものは光学顕微鏡では切断部が判然としないまでに再生し,標識された脊髄下降線維は大量に切断部を越えた.再生の不良なものは切断部に強くgliosisを生じ,cyst形成したり,切断部が乖離したままの部分もあった.概していえばgliosisは軽く,全周に及ぶものは少なく,肉眼では切断部を判別し難いものが多かった.行動も正常と見分けがつかない場合が殆どだった. 以上から少なくとも生後1-3日齢のラット脊髄においてはそれ自体に再生する能力を持つことが明らかとなった.
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