Research Abstract |
人工呼吸時の肺循環特性を把握するため,実験とシミュレーションの両面から研究を進め,以下に示す成果を得た。 1.ヘパリン処理後屠殺した白色家兎を用いて,肺動脈側を一定の静水圧に保持し,肺に一定ガス圧力を負荷したときの肺血流量を測定した。その結果,負荷したガス圧力が低い範囲では,肺血流量はガス圧力の増加にともない線形的に減少するが,ガス圧力が肺動脈圧近傍になるとその減少率が大きくなることがわかった。 2.分岐構造を有する肺動脈および肺静脈血管系,およびネットワーク構造を有する肺胞毛細血管系の血液流れを表す肺循環モデルを用いて,上記の実験条件を設定したシミュレーションを行った。その結果,実験結果と同様の肺血流量の減少傾向が再現され,肺循環モデルの妥当性が示された。また,肺胞毛細血網の下流側の部分が虚脱し始めると肺血流量が顕著に減少することがわかった。 3.血管が圧迫されると血流抵抗し血流量は減少するが,血圧が上昇するため毛細血管が完全に虚脱するのが防止されることが,シミュレーション結果から示唆された。このように,詳細な力学モデルに基づくシミュレーションを通じて,外部から測定される実験結果から,肺内部の力学状態を予測できることを示した。 4.シミュレーションを通じて人工呼吸時の肺血流量を検討した結果,通常の人工呼吸で設定されている吸入圧力により,肺血流量が約1割減少することがわかった。 5.血管の分岐構造の非対称性が肺循環特性に与える影響を調べるため,血管分岐構造の非対称性を考慮した肺動脈および肺静脈血管系の血流モデルを構築し,肺循環血流モデルを拡張した。
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