Research Abstract |
細胞接着性オリゴペプチドRGDS,REDV,EILDVを液相法により合成し,元素分析,アミノ酸分析により合成されていることを確認した.(RGDS)_nの合成に関しては,以前の手法に改良を加えることにより重合度が向上し,平均重合度n=20以上のものが得られるようになった.ハイブリッド体を得るために,合成高分子であるポリビニルピロリドンの側鎖のアミド結合(-CO-NH-)を加水分解し,カルボキシル基が得られることが明らかになった.そのカルボキシル基をもちいて,RGDSとのハイブリッド体(PVP-RGDS)を得ることができた.また,メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体とRGDSとのハイブリッド体(MAMEC-RGDS)も得た. これらのサンプルを用いて,細胞接着阻害実験を行った結果,(RGDS)_nは,RGDSと比較すると初期の段階から顕著な阻害効果が見られた.オリゴペプチドの繰り返し数が長くなるにつれて活性は,増大傾向にあると推測される.また,ハイブリッド体においても,細胞接着阻害実験の結果から,顕著な阻害効果が見られたが,僅かな接着細胞がハイブリッド体添加系で観察されたが,伸展などはみられなかった.以上より,ハイブリッド体も有望な細胞接着性材料と思われる. 分子力場を用いてpoly(RGD)構造最適化を行ったところ,最安定構造から残基当たりのエネルギー差が2kcal/mol以内に165種類の構造が得られた.poly(RGD)の最安定構造は,右巻きのβ^<8.6>-ヘリックスで8.6残基周期の長周期型ヘリックス構造を取っている.この構造は,Asp残基内の(Asp_i)NH・・・CO(Asp_i),Asp残基間の(Asp_i)CO・・・HO^δ(Asp_<i+3>),Asp残基間の(Asp_i)O^δH・・・OC^δ(Asp_<i+3>)の水素結合の繰り返しにより安定化していた.ヘリックス全体での水素結合は,Asp残基内および残基間でしか見られなかった.また,Arg残基とAsp残基の側鎖は,それぞれヘリックスの外側と内側の相反する方向を向いていた.2残基の側鎖の配向が細胞接着活性に影響を及ぼしていると考えられる. 以上の結果が本年度の研究で明らかになった.
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