Research Abstract |
目的 ここ数年の大脳半球機能差研究は,左右半球機能の差に注目するよりも半球間の統合過程や半球機能の制御作用(メタコントロール)に焦点が当てられてきている.本研究もその流れに沿ったものである.研究者は,これまで刺激に対する優位視野への練習効果並びに学習経験の影響について検討してきた.これを受け本研究では,メタコントロールや半球間の統合作用への練習効果が検討された.さらに利き手との関連性にも注目した. 本研究での目的の第1は,Hellige(1987)が提唱したメタコントロールのパラダイムを使って,比較的高次の課題である可算操作のメタコントロールがブロック間で変動するかを検討することであった.第2の目的は,同じ可算課題を用いて半球間の統合機能(両視野提示優位性)がブロック間でどのように変化するかについて検討することであった. 実験1:右利き者,左利き者の加算課題のメタコントロールについて 右利き,左利き健常成人を対象に漢字あるいはアルファベットで書かれた2つの数字を提示し,2つの数を足し口頭で報告させた.数字刺激提示の条件は,左視野に2つ提示される条件(LVF),右視野に2つ提示される条件(RVF),中央に提示される条件(CVF)の3つであった.刺激表記の条件は,アルファベット条件,漢字条件,アルファベット+漢字条件(MIX条件)の3つであった.<右利き>正答数を指標として表記条件×提示視野の分散分析を行った結果,交互作用が認められた.下位検定の結果,メタコントロールの作用が認めれ,左半球が主に加算課題を担当していることが示唆された.このメタコントロールの作用は,ブロック間で変化しないことが明らかとなった.<左利き>メタコントロールの作用は認められなかった. 実験2:右利き者,左利き者の両視野提示優位性 実験1とは,提示条件だけが異なる実験が行われた.提示条件は,LVF,RVF、と両視野に提示される両視野条件(BVF)であった.一側視野提示条件(LVF/RVF)よりBVFの成績が高い傾向(両視野提示優位性)は,右利き,左利きの量群に見られたが,ブロック間での違いは認められなかった.
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