Research Abstract |
各都市の自然条件としての地震危険度は,極値分布の当てはめによる手法を用いているが,各都市の地震動の強さの相対値は,再現期間の長さによって変化する傾向がある。 統計的決定理論による費用対効果分析モデルを用いて荷重のレベルを決定する方法としては「総費用最小化原則」と「総効用最大化原則」の2つが主な方法として考えられるが,建築物が建設後どの時点で被害を被るかで建設目的の達成度が異なることを考慮に入れられる点で後者のほうがすぐれていると思われる。「総効用最大化原則」によれば,通常の建築物では,被害による損失の期待値よりも効用機会の損失の方が荷重レベルの決定にはるかに大きな影響を与える,という結論を得た。また、一般的に荷重レベルの最適値は「総効用最大化原則」による方が「総費用最小化原則」よりも大きくなる。 各都市の経済量を推定する資料は,現在も継続して収集を進めている。これらを反映したモデルの作成も同時に進めているが,今のところ各都市が独立したモデルになっており,ある都市の被災が他の都市にどう影響するかをどうモデル化するかについて検討中である。 現在の個別の建築物のモデルによる検討では,各都市の経済量などは荷重レベルの決定に影響を与え,最適荷重レベルでの被害確率は各都市でかなり異なる場合がある。これは地震危険度の低い地域ではわずかな耐震コストの増大で被害確率を大幅に減少させることができるという計算結果になることの影響が大きいようである。しかし,これは数千年に一度といった非常に長い再現期間に対応した荷重レベルを考えることになり,統計資料から機械的に外延して荷重レベルを予測することが,信頼性の点で大きな問題となるように思われる。
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