Research Abstract |
メタロチオネインと称される一群の重金属を結合するタンパク質があり、微生物から高等生物に至るまで広くその存在が知られている。このうちのヒトメタロチオネインは61個のアミノ酸で構成されているが、そのうちの20個がシステインであり、7原子の重金属と結合し、重金属との親和力はシステインとの間にあると言われている。これらの事を確認し、どのシステインが重金属との結合能にどの程度寄与しているかを調べることを目的にした。 設備備品で購入したパーソナルコンピューターを用いて、ターゲットとなるシステインをリサーチし、11カ所のシステインを決定した。続いてこれまでに既知の重金属結合タンパク質をリサーチし、重金属結合に全く関与しないアミノ酸に変換した場合、タンパク質全体の構造変化が生じることを考慮して、亜鉛や銅に配意し易いとされるヒスチジン(C15H,C19H,C21H,C24H,C29H,C33H,C34H,C37H,C44H,C48H,C60H)に変換する事にした。 次に変異オリゴヌクレオチドを他の部位に接着ないように遺伝子設計し、11個化学合成した。部位特異的変異操作はキットを用いて行った。変異部位を含むヒトメタロチオネインDNAを取得し、lacZ融合発現ベクターに組み込んだ。大腸菌を形質転換し、11種類のアニューアルメタロチオネイン発現ベクターを含む大腸菌を得た。LB培地28℃培養後、対数増殖期中期に熱誘導させた。16時間培養後集菌し、超音波破砕機により菌体を破砕し、不溶性画分をTriton-X溶液で洗浄を繰り返し、精製された11種類のアニューアルメタロチオネインタンパク質を得た。 最後に得られた精製タンパク質を用いて|^<109>Cd|と亜鉛、銅、カドミュウムとの競合阻害による重金属結合能を測定した。C24HとC34Hは亜鉛との競合阻害ニおいてwild-typeと同じ結合が見られたが、C21H,C29H,C37H,C44H,C48Hは結合が見られなかった。C24Hは銅との競合阻害においてwild-typeに比べてカドミュウムにより結合していたが、C34Hは結合能が減少した。C24Hはカドミュウムとの競合阻害においてwild-typeと同じ結合が見られたが、その他のアニューアルメタロチオネインは結合量が減少した。 このように1アミノ酸を変換しただけで、全く重金属結合能が失われたものから、カドミュウムへの結合能が向上したものまで種々のアニューアルメタロチオネインが得られた。今後これらの解析を進めアミノ酸と重金属結合能との関係、重金属結合能のより向上したものや異種の金属結合能をもつようなタンパク質を創製していきたい。
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