Research Abstract |
1.鎖長の異なるアルカンセレノール(CnSeH:n=11,14,18)および電子伝達蛋白質と相互作用できる末端官能基を有するセレン化合物(4,4′-ジピリジルジセレニド:4-PySe)を合成した。 2.上記セレノール化合物の自己会合膜を形成させる基板は、オイルレスな環境下、基板を580℃で加熱して金をマイカ上に蒸着し、蒸着後に550℃でアニールして作成した。この基板には、60度で交わるスッテプラインがSTMによって観察され、原子レベルで平滑な金(111)結晶面を持つことを確認した。 3.金基板を上記CnSeHの1mMヘキサン溶液に浸漬することで、それら化合物の自己会合膜を形成した。アルカンチオールとは異なり、これら化合物の還元的脱離のボルタモグラムは鎖長に依らず、複数のピーク(-0.95,-1.05,-1.15Vvs.Ag/AgCl)を示した。現時点では、これらピークの帰属は明らかでないが、合成化合物のNMRの時間変化および脱離ピークの浸漬時間による変化から、保存および溶液中のCnSeHの分解生成物由来である可能性は低いと考えられた。異なる基板(例えば銀ディスク)上ではピークの数、および電位が変化することから、複数の脱離電位は金基板へのCnSeHの結合サイトの違いを反映している可能性が推察された。 4.4-PySeを修飾した金電極上に吸着したチトクロムcは-0.3Vvs.Ag/AgClで、また、この吸着層を介して溶液中のチトクロムcは+0.06Vvs.Ag/AgClで酸化還元を行うことが、分光電気化学測定から判った。この結果を、4-PyS(4,4′-ジピリジルジスルフィド:Seの代わりにSを含む)を修飾した場合と比較すると、溶液中のチトクロムcの酸化還元電位は同じであるが、吸着種の電位は異なる。この理由として、4-PySeは4-Pysよりも金電極へ吸着力が弱く、4-PySeが部分的に脱離してチトクロムcと置き換わっていることが考えられた。
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