Research Abstract |
花粉にパーティクルガンによって遺伝子を導入した後,受粉を行い,形質転換体を作成することを目標に実験を行った.一回の受粉で多数の種子をつける植物が有利だと考え,タバコを実験に用いた. パーティクルガンの条件設定にはpBI211を用い,トランジェントな発現をGUS活性によって検出した.さらに,形質転換体を得る実験ではhygromycin phosphotransferaseをセレクションマーカーに持つプラスミドp35s-GUS-HPT2-KSを(株)三井東圧ライフサイエンス研究所より分譲を受けた. パーティクルガンはdu PontのBiolystic,Helium-Driven PDS-1000/He systemを使用した.採取した花粉は,花粉発芽培地に懸濁し,吸引濾過によってニトロセルロース膜に載せた.一回あたり0.5mgの金粒子に1μgのDNAを処理してbomberdmentを行った.圧力は900psi,1100psi,1300psiの3通り,金粒子の大きさは1.0μmと1.6μmの2通りで条件設定を行った.その結果金粒子は1.6μm,圧力は1300psiで最も良い結果が得られた.しかし,現在のところ,GUS活性が確認できた花粉はおよそ10,000個に1つなので,2,000個種をつけるタバコでさえ,一回の受粉で受精できる確立は5分の1という低い確率になる.さらに,金粒子を打ち込まれた花粉はそうでない花粉に比べて活力が低く,受精までの競争で負ける可能性が高いのではないかと考えるとさらに確率が低くなると思われる.また,成熟した花粉に遺伝子を導入しているため,受精後細胞分裂を開始するまで導入した遺伝子が核のゲノムに取り込まれないので,かなり高い確率で、花粉に遺伝子が導入されることが望まれる.その点で,パーティクルガンを利用する場合には技術的に困難ではないかと思われる.
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