Research Abstract |
1.胆汁中粘液糖蛋白のウエスタンブロッテイング:肝内結石症9例,総胆管結石や胆管癌,膵癌等による閉塞性黄疸症例37例のPTCD胆汁を収集し,ウエスタンブロッテイング(ABC法)で,ABH血液型物質,Lewis血液型関連物質(a,b,x,y),sialyl-Tn,Tn,T坑原,及びCarcinoembryonic antigen(CEA)の検出を試みた.この結果,CEAとLewis Xが肝内結石症の粘液糖蛋白と糖蛋白に高率に検出され,肝内結石症の症態形成との関連性が示唆された.また,sialyl-Tn坑原は,肝内胆管癌,総胆管癌,膵癌にのみ高率に検出され,癌の早期診断への応用も期待された.その他の血液型物質等は,特に疾患特異性を示さなかった. 2.肝内胆管における粘液糖蛋白の免疫組織化学的検討:肝内結石症46例(癌合併16例,異型上皮合併15例,非合併15例)正常剖検肝11例の肝門部大型胆管を含む組織切片を収集し,胆汁中粘液糖蛋白の解析で変動がみられたCEA,Lewis Xの発現を検討した.この結果,正常大型胆管では殆ど発現がみられないCEA,Lewis Xが,肝内結石症では,癌や異型上皮以外の箇所にも高率に陽性で,特に結石周囲でより強く認められた.CEAの発現は大型胆管上皮,Lewis Xは胆管付属腺(壁内腺)に局在しており,胆汁中のCEA,Lewis Xはこれらの胆管壁成分より分泌されると考えられた.閉塞性黄疸症例胆管壁におけるCEA,Lewis Xの発現は現在検討中である. 3.今後の研究の展開:今回の検討より,胆汁中粘液糖蛋白は肝内結石症や胆管癌等で特異的な変動を示すことが明らかになった.今後,さらに,胆汁中の他の糖鎖,糖蛋白を,レクチンブロッテイング法も加えて検討して行きたい.
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