Research Abstract |
[研究I]循環動態に及ぼす影響に関する動物実験;雑種成犬を用いた実験系では、鏡視下内臓神経切断直後、一過性に平均動脈血圧が10〜20mmHg程度低下する以外、心拍数、心拍出量、肺動脈圧、中心静脈圧、肺動脈楔入圧、等に殆ど変化がなかった。平均動脈圧は手術終了まで前値に回復した。 [研究II]両側内臓神経同時切断の安全性に関する動物実験;雑種成犬を用いた本実験でも,研究Iに於ける片側神経切断直後の循環動態の変化,即ち平均動脈圧の一過性,軽度低下を見たのみで,他の循環動態に重大な変化を認めなかった.また血液化学的検査成績では,術後2週間まで本法に起因すると考えられる固有の検査成績の異常を認めなかった. 以上の実験成績に基づき、経胸的胸腔鏡下内臓神経切断術は、その安全性と低侵襲性が実証され、臨床応用が可能と結論できたので、本法を進行膵癌による上腹部疼痛に悩む患者に応用した。 [研究III]1994年8月から1995年2月までの期間に4名の切除不能膵癌で、上腹部疼痛を有する患者に本法を単独または胃腸吻合術と合併して応用した。全例で手術は問題なく終了、麻酔覚醒直後から術前の上腹部痛は完全に消失した。また、術後本法に固有と考えられる血液生化学的検査成績の異常を認めなかった。 本研究の成果は、第7回内視鏡下外科手術研究会(仙台)、第4回世界内視鏡下外科学会(京都)、第43回日本消化器外科学会総会(東京)、第94回日本外科学会総会(東京)、第45回日本消化器外科学会総会(横浜)で発表した。今後さらに臨床上の安全性、効果の観点からの検証が必要と考えられ、現在、研究の継続を文部省科学研究費補助金、平成7年度一般研究(c)に申請中である。
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