Research Abstract |
無菌顎患者に対して,同一術者が同一材料と術式により製作,調製した全部床義歯を装着し,良好な経過をたどっている20名を被験者として,舌運動機能,手指運動機能,咀嚼機能を評価した.舌および手指の運動機能の評価は,規制した音刺激に応答するタッピング運動時の規則性を分析する方法により行った.すなわち,舌運動の観察には周波数5MHzの電子コンベックス型浅部用探触子を接続した汎用超音波診断装置を用い,音刺激と舌運動軌跡をMモード画像上に同時表示し,Urtrasono recorderにて記録した.また,手指運動の観察には,音刺激に可及的に同調してボタンスイッチを示指で押し放す動作を行わせ,音刺激とボタンスイッチのオンオフ時をレクチホリ-に記録した.舌および手指ともに運動周期時間の標準偏差値を運動能力評価の指標とし,分析を行った.咀嚼機能の評価は,3gのピ-ナッツを片側で20回咀嚼させた後,粉砕されたピ-ナッツの全量を回収する操作を3回繰り返し,3回分の粉砕されたピ-ナッツ全量を試料として篩い分け,各篩の上に残留したピ-ナッツを目盛り付きスピッチグラスに移し,遠心分離を行った後,容積を計測することにより行った. 得られた結果は以下の通りである. 1.舌運動能力の平均値は,105.5±32.0msecであり,手指運動能力のそれは,73.2±27.4msecであった.また,咀嚼効率の平均値は,44.0±10.8%であった. 2.舌運動能力と手指運動能力との間には有意な相関が認められた(r=0.829,p<0.01).なお,手指運動能力と咀嚼効率との間(r=0.597,p<0.01),また,舌運動能力と咀嚼効率との間(r=-0.748,p<0.01)には,有意な相関が認められた. これらの結果から,運動制御能力をパラメータとする全部床義歯装着者の咀嚼機能評価が可能であることが示唆された.
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