Research Abstract |
骨格性開咬では、下顎角の開大、下顎枝の短小や臼歯の挺出に伴う下顎骨の後下方への回転という形態的特徴が認められる。このような顎顔面形態の成因には咀嚼筋機能の低下が深く関与していると考えられている。本来、顎顔面形態と咀嚼筋活動の関連を探るためには全生活時間帯にわたる筋活動の観察が必要である。しかし、これまでは筋活動を研究室内で短時間かつ意識的状態で記録するにとどまっていた。 そこで今回は当教室で開発した終日筋電図記録分析システムを用いて、骨格性開咬の形態的特徴を有する患者の終日の咬筋筋活動を記録し、正常者と比較してどの程度の機能低下が存在しているかについて検討した。 被験者は広島大学歯学部附属病院矯正科を受診した骨格性開咬患者のなかから選択した。現在まで,7歳,8歳,12歳,20歳の計4名の女子について,終日筋電図記録分析システムを用い,連続24時間にわたる咬筋筋電図を記録し,咬筋活動回数および活動時間について集計した。 その結果,終日24時間にレベル2(随意的最大咬みしめ時放電圧の1/4に相当)に達したバーストの出現回数および総持続時間は7歳児で922回,137秒,8歳児で619回,51秒,12歳児で1390回,354秒であった。これは正常咬合の若年女子の平均(3574回,1889秒)と比較して,回数で約1/3〜1/6,時間で約1/5〜1/20であった。一方,20歳女子ではレベル4(随意的最大咬みしめ時放電圧の1/2に相当)で成人女子の平均の1/6とかなりの低下が認められたものの,レベル2では3028回,1458秒で,成人女子の平均(2356回,419秒)よりも多かった。 このように,正常咬合者と比較して骨格性開咬の若年者では筋活動の低下が認められたものの,成人ではその差が明確ではなかった。しかし,現段階では結論を導くには被験者数が不足しているため,さらにデータ収集を行い,検討することが必要と考えられた。
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