Research Abstract |
フェノール化合物を含む水を塩素処理し、その際に生じるフリーラジカルをDMPOで捕捉し、そのDMPO-付加物の化学構造の決定を目的とした。 まず、DMPO-付加物生成に関する情報を得るためにスピントラップ剤、塩素添加後の経時変化、塩素濃度、フェノール化合物濃度及び反応液のpHの検討を行なった。スピントラップ剤ではDMPOが最も明瞭なシグナルを与え、その強度は50-150分で最大となり、その後は徐々に減少した。塩素濃度が250 mg/l以上,フェノール濃度は最終濃度が0.4 mMの時,また反応液のpHではpH 7.0-8.0で最大のシグナル強度を与えた。 以上得られた条件をもとに種々のフェノール化合物を塩素処理した結果、DMPO-付加物のシグナルはPhOH、2-MePhOH、3-MePHOH、4-MePhOH、2,4-DiMePhOH、2,6-DiMePhOH、3,5-DiMePhOH、2-Cl-PhOH及び4-Cl-PhOHで認められた。これらのことよりフリーラジカルがDMPOに捕捉されるのは水酸基がラジカルになったものではなく他の位置でラジカルとなり、DMPO-Rを形成することが分かる。更にDMPO-Rは2個の窒素原子と1個の水素原子により分裂して18本線を与えることが示された。 以上のことよりフェノール由来ラジカルの構造を決定するためには反応混液中よりDMPO-付加物自体の抽出または分離が必要であり、その手段として高速液体クロマトグラフィーによる分離が最適と考えられる。これによりDMPO-付加物を分離後集めて、元素分析、質量分析、核磁気共鳴スペクトル及び赤外吸収スペクトル等の測定によりDMPO-付加物の構造決定は可能と考えられる。
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