Research Abstract |
シリコン表面障壁型半導体検出器(SSBD)の中性子照射効果を測定するため,SSBDと比抵抗値測定用電極を同一のシリコンウエハに製作した.しかし,この方法では,比抵抗値測定用電極とSSBDの陽極とが電気的ループを作り,SSBDに対するノイズ源となることが分かった.このため,SSBDと比抵抗値測定用電極とを独立のシリコンウエハに作成し,それらを重ね合わせて測定素子とした. この測定素子と濃縮ウランターゲットを真空チャンバに配置し,京都大学原子炉実験所の鉛減速中性子スペクトロメータを強力中性子源として使用し,実験を行った.測定素子には本来の比抵抗値が200Ωcmと3000Ωcmの二種を用い,SSBDに掛けるバイアス電圧を200ΩcmのSSBDでは定格の64V,3000ΩcmのSSBDでは0V,64Vおよび定格の200Vとして核分裂片のエネルギースペクトルを測定すると共に,比抵抗値の変化を測定した.同時に漏れ電流をも測定した. 照射中性子量は,大型加速器施設で予測される値より2桁小さい10^<12>n/cm^2であった.漏れ電流は,他の研究者の報告と同様に,中性子照射量に比例して増大した.比抵抗値は,これまでの実験結果から導き出された経験式が予測する値よりもかなり大きく変化した.核分裂片エネルギースペクトルは3000ΩcmのSSBDで測定した場合,定格の200Vのバイアス電圧で2MeV,64Vので4MeV,0Vで10MeVの減少となった.これらより空乏層内部の電場が強い200ΩcmのSSBDに64Vを掛けた場合にはエネルギースペクトルの顕著な減少は見られなかった. シリコン表面障壁型半導体検出器における中性子照射効果のその場観察を行い,比較的小さい中性子照射量でもエネルギー応答特性の変化が測定できた.今後,電荷収集過程についての定量的に評価を行う.この結果を1995年7月に米国で行われる Nuclear and Space Radiation Effects Conference において発表すべく,投稿している.
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