東アジアにおける人間活動に基づく生態系の劣化と修復
Project/Area Number |
06NP0205
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Research Category |
Grant-in-Aid for Creative Basic Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 聡 東京大学, 農学部, 教授 (20032295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定方 正毅 東京大学, 工学部, 教授 (30011175)
小倉 紀雄 東京農工大学, 農学部, 教授 (30015127)
武田 和義 岡山大学, 資源生物科学研究所, 教授 (90003516)
但野 利秋 北海道大学, 農学部, 教授 (40001440)
山崎 素直 東京大学, 農学部, 教授 (00011982)
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Project Period (FY) |
1990 – 1994
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1994)
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Keywords | 塩類土壌 / 土壌改良 / 耐塩性育種選抜 / 空中写真 / 酸性雨 / 硫黄酸化物 / 工業都市 / 脱硫技術 |
Research Abstract |
塩性土壌班の研究の主要な対象地区である中国・河北省南皮県において、研究開始時より観測をはじめた種々の気象観測データを本地域の作物生育との関連で解析した。境界層数値モデル式を用いて、冬小麦が初-中期生育で多量に水分を必要とする2月下旬から5月中旬における土壌水分の動態と塩分集積をシミュレートし、作物栽培からみた干ばつ害、塩類障害にを対する対応策を検討した。一方、南皮農業生態試験場に設置したライシメーターによる土壌塩分の動態試験結果は上記の気象データによる土壌塩分の動態をより定量的に示すとともに、土壌水中の溶解イオンの行動はイオン種により大きく異なり、NaイオンはCa、Mg、Kイオンに比べ、移動範囲が大きいことが明らかになった。4年間にわたって日本から導入した麦類10,000品種の耐塩性選抜試験の結果、14種を本地域でもっともよく適合する品種として選抜した。また、本地域の耐塩性雑草の解析から、これと類縁の栽培品種を推定し、アスパラガスなど5種の食糧作物が有望であるとした。空中写真撮影による塩類土壌の分布を地形図と併せて示すと、きわめて明確な塩類の分布が特性され、この方法が安価で、効率的な優れた土壌調査法になることを示した。 酸性雨と陸水・森林生態系班では重慶を中心とした工業都市から排出される石炭ばい煙中の二酸化硫黄と硫酸イオンが森林、土壌などに及ぼす影響をまとめた。重慶市における酸性降下物の主要なものは硫黄成分の高い石炭を燃焼することから生ずる二酸化硫黄の濃縮物であることがわかった。そのため、アニオンの90%は硫酸根で占められるという典型的な硫酸酸性降下物で構成されている。重慶市付近の年間の森林への硫黄の沈着量は湿性沈着:88.1、樹冠へのSO_2の乾性沈着:62.4、林床へのSO_2の乾性沈着:2.5kg/ha/aとなることを推定した。この量は他の東アジア地域の国々に比べると高く、また、ドイツのルール地方のマツ林への乾性沈着量が83.4kg/ha/aと低いとはいえ、かなり深刻な事態に近づきつつあることが裏付けされた。また、年間降水平均pHを降水、林地内降雨、樹木流下液で調べてみると、それぞれ4.47、3.82、2.92と観測され、とくに樹木流下液のpHが極端に低くなっていることがわかった。酸性雨の土壌への影響では、土壌の種類とその植生とくに樹木種で大きく異なった。一般に紫色土壌は黄色土壌に比べると、酸性降下物による影響は小さく、土壌の緩衝作用が大きく作用すると考えられた。 本年度は本研究の最終年度にあたるので、1994年11月3日〜5日にかけて、中国北京市の友誼賓館で塩類土壌班と酸性雨班共同で、日中合同の「東アジアの陸域生態系に及ぼす土壌塩類化と酸性雨の影響と修復」と題してシンポジウムを開催した。約120名の参加者を得て、活発に討議された。なお、本シンポジウムの記録を231ページにわたるProceedingとして刊行した。
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Report
(1 results)
Research Products
(12 results)