Research Abstract |
非言語的材料の再認記憶において,テスト前にターゲットの言語記述を行うことが記憶成績にどのような影響を与えるかについて,言語使用能力が十分に発達していない幼児を対象に,検討を行った.これまで,成人を対象に顔を材料として行った実験を行ってきたが,再認テスト前の言語記述が記憶成績を向上させる場合があること,その場合,テスト前にターゲットを視覚的に思い浮かべることも言語記述ほどではないが記憶成績を向上させることが明らかになっている.類似の条件で,幼児においても同様の現象が見られるかについて実験を行った. 6歳児にビデオにより1名のターゲットの顔を提示し,よく見るよう求めた.3日後に,被験児は言語化群,視覚化群,統制群のいずれかに無作為に割り当てられ,再認テストを受けた.言語化群の被験児はテスト前にターゲットがどのような顔であったかについて口頭で答えるよう求められ,視覚化群の被験児はターゲットの顔を思い浮かべるよう求められた.統制群の被験児はその間無関連の課題に従事した.その後,ターゲットを含む9類の顔写真を提示され,前に見た顔を1枚示すよう求められた.さらに,見ていないと思う顔を何枚でも示すよう求められた. 再認課題の成績は,視覚化群で言語化群,統制群より高かった.この結果は言語化群の成績がもっとも高く次いで視覚化群という,成人における結果と異なっている.言語記述をすることが,成人の言語化,視覚化に共通に見られる促進効果を打ち消したことが示唆された. なお,このほかに,動作を記憶材料とした成人の記憶についても,言語化,視覚化について同様の実験を行いデータを得ているが,その分析には今少しの時間が必要である.
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