Project/Area Number |
07208203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
古賀 俊勝 室蘭工業大学, 工学部, 教授 (90113688)
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Project Period (FY) |
1995
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1995)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1995: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 原子波動関数 / 電子状態 / Hartree-Fock法 / 基底関数 |
Research Abstract |
基底関数展開を用いるRoothaan-Hartree-Fock近似の原子波動関数は、それ自身、原子の電子状態の解明に基本的情報を与えるだけでなく、分子系への応用における基底関数を提供するという重要な役割を持つ。1974年、ClementiとRoettiによって発表されたHeからXe原子までのRoothaan-Hartree-Fock(RHF)波動関数は、Slater型基底関数(STF)を用いた標準的な原子波動関数として、様々な研究に利用されている。しかしながら、Clementi-Roetti波動関数には種々の問題点がある事も知られている。前回、我々は必要な基底の大きさを検討した上で、STFの主量子数{n}と軌道指数{ζ}の同時最適化を行い、改良されたRHF波動関数を中性原子He-Xe、一価のカオチンLi^+-Cs^+およびアニオンH^--I^-に対して開発した。これらの波動関数の全エネルギーは数値的Hartree-Fock(NHF)法のそれをほとんど再現している。しかし、波動関数の性質を詳細に調べてみると、例えば、軌道動径関数の原子核近傍での挙動(カスプ挙動)や原子核から離れた点での挙動(遠距離漸近挙動)などに正しいHartree-Fock原子軌道の振る舞いからの誤差が見られた。 本研究では、真のHF原子軌道が満たすべきいくつかの性質を制約条件として、STFの{n}と{ζ}の最適化をやり直し、真にnear-Hartree-Fockと呼べるRHF原子波動関数の開発を行った。以下に、中性原子He-Xeについての結果をまとめる。全エネルギーのNHF値に対する絶対誤差は極めて小さく、その最大値は第一、二、三、四周期原子について、それぞれ、0.02、0.1、3、8μhartreesである。ビリアル比の真の値(-2)からの誤差は、53個の全ての原子を通して、1×10^<-9>以下であった。次に、軌道エネルギーの精度を、基底関数の影響を最も受け安い最外殻について調べると、最大の誤差は、s軌道で3.0μhartrees、p軌道で1.4μhartrees、d軌道で3.3μhartreesであった。開発した波動関数が表現する電子分布の正確さは、位置空間および運動量空間のモーメントを解析することによって確認した。遠距離漸近挙動に対しては、最小の軌道指数が最高被占軌道の軌道エネルギーと矛盾しないよう基底関数系を設計した。最も困難なカスプについても、全ての占有軌道のカスプ値の真の値(+1)からの誤差が0.001以下である。 本研究で開発した一連の高精度な原子波動関数は、今後の原子・分子の電子構造の研究に基本的な情報を提供する重要な研究成果といえる。
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