Project/Area Number |
07208211
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
相原 惇一 静岡大学, 理学部, 教授 (40001838)
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Project Period (FY) |
1995
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1995)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1995: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 宇宙化学 / 芳香族炭化水素 / PAH / PM3分子軌道法 / 振動構造 / ベンザイン / アライン |
Research Abstract |
1.宇宙における多環式芳香族炭化水素(PAH)の生成消滅反応の解明を目指して、PM3分子軌道法を用い、PAH分子から2個以上の水素原子が解離してできる分子やイオン、特に、PAH分子の隣り合った2つの水素原子が解離してできるアライン(aryne、ベンザイン環をもつPAH分子)の構造最適化と振動構造計算を行った。PAH分子から隣り合った2個の水素原子が解離する場合、解離した水素原子が分子を形成すると仮定すると、解離エネルギーは約100kcal/molとなる。これは個々のCH結合の解離エネルギーにほぼ等しく、この種の水素分子離脱反応は、宇宙の強い紫外光照射場では比較的容易に起こることがわかった。 2.水素分子脱離反応の生成物は、ベンザイン分子に見られるようなCC三重結合をもち、その伸縮振動によるスペクトル線は、2050‐2230cm^<-1>に出現すると予想される。CC三重結合は、分子の対称軸からずれた位置にあると、大きな振動強度を示す。 3.宇宙ではCH結合関連の振動よりCC結合関連の振動が強く観測されることから、水素分子脱離反応の可能性とはかかわりなく、PAH分子はかなりの程度脱水素しているとされてきた。もし多数の水素原子を失ったPAH分子が大量にあれば、ベンザイン型のCC三重結合をもつ分子は確率的に大量に存在することになるが、現実には宇宙ではこのようなスペクトル線は観測されないので、この推論は正しくないと考えられる。したがって、CC三重結合をもつ分子が宇宙に大量にあるという証拠はなく、宇宙におけるPAH分子の脱水素化の程度は決して大きくはないと推測される。CC結合関連の骨格振動が強いことは、PAHが一定の割合でイオン化していると考えると一応説明がつく。
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